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スマブラ X 小説 【PEACE/PIECE END】
AM : 9:20
目が覚めてみれば、もうこんな時間だ
意識が目覚めていく中で、重たい空気が体にのしかかってくる
・・・・・・・・・・
こんなに目覚めの悪い朝は今日以降二度と来ないで欲しい
重たい体を無理矢理起こし、壁にかかった赤い帽子を手に取る
「・・・これからどうしていけばいい・・・?」
答えが返るはずないと知りながらも、マリオは自分の帽子に話しかけた
だがそれは無駄なことだ
今ここにある現実は夢と違って不変なのだから
いい加減自分にそのことを言い聞かせなければ、これからやっていけない
「はぁ・・・」
帽子をかぶり、マリオはベッドから下りた
ん・・・?
待てよ
どうして俺は今寝ていたんだ?
ふと気づいた
記憶をよく思い起こしてみよう
早朝、目が覚めてから・・・
どしゃぶりの雨の中、キノコタウンが戦争していた光景を目にした
俺の中で全てがひっくり返った瞬間のことだ あれは夢なんかじゃない
そのあと 確か怖くなって家に帰った
いや、家の庭でぼう然としていたと思う
それから、エメルと名乗るヨッシーにもう一度会って、
「オレのしもべになれ」
とか言われて、反発したら凄い蹴りを食らって・・・・
その後、確か空から誰かが降ってきたような
カチャ
「?」
ふと我に返る
何か居間から物音が聞こえた気がする
不審に思い、マリオは寝室のドアをそっと、少しだけ開いた
ドア越しのわずかな視界に目をこらす
ト・・・タン・・・
やはり物音が聞こえる
それも今度はよりはっきりとだ
誰かが居間に居るように思えた
だけど、俺が居ないこの家で他に誰がいるんだ・・・?
人の気配は確かにする 誰かが居るのは間違いない
だけど、このドアの隙間から見える視界じゃその姿を見ることがどうにもできない
ん・・・ま・・・まさかルイージ?
心臓がドクンと鼓動を打った
そうだ、家にルイージが帰ったに違いない・・・!
この感じ・・・いつも朝食の準備をしているルイージが鳴らす、
お皿をテーブルに並べる時の音じゃないか
「ルイージ!!」
バッとドアを開け、マリオは叫んだ
・・・・・・・!?
「・・・あ、おはようマリオ君」
テーブルに皿を並べていたのはルイージじゃなかった
ひとりの、若い天使だ
目を丸くする俺に向かって、
その天使は見たこともないようなまばゆい笑顔を俺に向けた
第10話
スマッシュボール
【前編】
ガララ
彼は、俺がいつも座っているイスを引いた
掛けてくれといわんばかりに
「簡単なもので悪いけど、庭の倉庫に非常食があったんでさ、
僕なりにアレンジを加えておいたから、悪くはないと思うよ」
そういって、再び彼はニコっと笑う
テーブルには、キノコが山盛りのシチューに
チーズと野菜を挟んだ2きれのパンが綺麗に並べられていた
ほっかほかのシチューからにおいと共に白いゆげがたちのぼっている
マリオは非常食とは思えないほどの出来の料理を前に、
有無を言わずイスに座りこんでしまった
よっぽど空腹だったんだろう
いつも自分が使っているスプーンまでもがていねいに用意されている
「・・・えっと・・・・・・」
少し混乱しながらも、天使に顔を向けた
「マリオ君、君には大事な話がある
とりあえず、今はそのペコペコのお腹を満足させてから・・・」
天使は笑顔でありつつも、目だけは真剣な表情をしてそう言った
「ちなみに僕の分のことは気にしないでいいよ」
「あ、ああ・・・じゃあいただきます・・・」
普段はルイージに向かってそんなことは言わないマリオであったが、
このときばかりは相手が相手だ
拝むようにして手を合わせてからスプーンを手に取る
それからわずかな間、俺が食事を続ける様子を
向かいのイスに座る天使は、片時も目を離さないほどジッと見つめていた
というよりも、まるで見守っているかのような?
しかし、彼の表情はまるで真剣なようだった
何を考えているのかはわからない
おそらく、世界に対する危機を感じてるのは俺と同じなんだろう
「マリオ君・・・、もう知ってはいると思う」
「!」
俺のあまり軽快には進まない食事に見かねてか、天使が話しかけてきた
ようやくか・・・俺は背筋を若干伸ばし、息をのんだ
「地上全土が今、少しばかりやっかいなことになっていてね」
「・・・ああ」
暖かいシチューが急激に冷めていく
食べ物の喉の通りもさらに悪くなる
「今君は、自分のせいでこうなっている
地上で争いが起こっているのは、自分のせいなんじゃないか
・・・そう思っているかもしれないけど、それは違う」
「・・・・・・・・」
俺の心情を最初から知っているような言い方だった
だけど・・・俺が逃げたせいで世界がこうなっていないとしたら・・・一体
「どういうことなんだ?」
口の中の食べ物を一気に喉の奥に押し込み、
俺はようやく言葉を発した
「僕らのせいなんだ」
「え・・・?」
"僕ら"?
天使は申し訳なさそうな表情で、目を反らした後そう言った
「いや・・・、僕らが直接の要因という意味じゃない
ただ、地上の混乱には僕らにも責任がある」
「ま、まって
俺が知ってることはそんな多くないんだ
クレムリン軍団や、エメルというヨッシーの仕業じゃないのか?」
「・・・・・・・・・」
天使は黙った
俺よりも多くのことを知っているのはわかる
知りたい、現状を、・・・そして今・・・、
「みんなは・・・スマッシュブラザーズのみんなはどうしているんだ?」
俺が一番聞きたかったことを彼に正面からぶつけた
みんな今何をしているのか、無事なのか?
そしてルイージは・・・?
「それは、僕にはわからない」
「・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・
部屋がシンと静まりかえる
天使はひじをついて、頭を抱え込んでいた
その様子からするに彼にも相当辛い事情があるように思えた
俺のように仲間とも離れ、今は独りでいるんだろうな
だからあのとき、空から傷だらけで降ってきたのかもしれない
マリオが天使に同情を感じている、そのときだ
「マリオ君、君が
君だけが今この世界の希望なんだ」
顔をあげた直後、彼は訴えるようにして言い放った
ものしずかな言い方でありながら、俺に必死の助けを叫んでることがわかる
「・・・・・・・」
希望・・・か
この俺が、この世界最後の希望
「違う・・・、俺じゃない 俺には、止められない
俺じゃあの戦争を止めることはできない・・・俺だけじゃ無理なんだ」
そう、この世界最後の希望は俺じゃない
なぜなら、俺にとっての最後の希望が・・・、
今目の前にいる天使なんだからな
「マリオ君、時間はもう本当に無いんだ 最後の時はもうすぐそこまで来ている
僕と一緒に・・・、来て欲しい」
「・・・・・・・・・・・・ああ・・・・・」
マリオは、天使の瞳の奥にうっすらと輝くものをみた
それは俺の中の光が反射してるようで・・・・・
AM 9:45
〜上空・戦艦ハルバード船内・メイン操縦席〜
巨大な戦艦が一機、
広大な大地よりはるか上空、雲の上にてとどまっていた
その正体は、かつての旧型の反省点を活かし、
徹底的に対空中戦を目的に改良され・・・
耐久力、飛行速度、迎撃能力など、あらゆる機能をすべからく進化させ
まさに空の支配者とまで言えるほどに様変わりした戦艦ハルバード
今その船内は緊迫に包まれた状況にあった
「応急修復作業はまだかかるのか?」
皆を率いるは、プププランドの独立騎士・メタナイト
仮面に素顔を隠し、マントに身を包むも、
彼からあふれ出る気迫のオーラは今、いつも以上の強さで充ち満ちている
「急ピッチで進めております!ポンプの破損、3カ所の修復を終え、
現在最終チェックに入るところです」
「・・・時間は少ない 迎撃準備を開始 あの固いシールドをなんとしても破れ」
「了解 メタナイト様」
「目標迎撃地点へ向かいます 到着予定時刻、AM 9:51:30 」
「・・・残りわずかか・・・」
キノコタウンにそびえ立つ巨大な城がメインモニターに映る
そこはかつて、立派なキノコ王国のお城が建っていた地点だったはずだが・・・
その姿に以前までの面影はほとんどといっていいほど、失われていた
〜キノコタウン・大広場〜
早朝から降り続けていたどしゃぶりの雨はピタっとやんでいた
今は日の光が、ぶ厚い雲のわずかな隙間を通ってキノコタウンを照らしている
しかし、辺りはまるで別世界だ 無惨な鉄の塊が見渡す限りに散乱している
常にせきこむような刺激臭が鼻についてまわり、歩いているだけで意識が危うい
「それにしても本当に酷いな・・・」
立ち止まらず勇み足で向かう先は、キノコ城だ
「あまり目を向けないほうがいい、前だけを見て歩いて」
俺と並んで歩く天使、もといピットはそう言った
天界の女神パルテナの親衛隊長、それが彼のはるか昔の役目だったらしい
ついこの間までは役目を終えて長い眠りについてたが、彼が次に目覚めたときには、すでにことは起こっていた・・・そうだ
俺よりも世界の現状を知っているようだけど、
長くなるようで、今はまだ俺に全部を伝えることはできないようだ
俺はこうして歩きながら、すこしずつピットの話をのみこんでいる
「一つ聞かせてくれよ、あの質問のことなんだけど」
俺は前を向きながらピットに訊いた
ついさっきのことだ ピットが俺の家を出てすぐに一つの質問をした
==========================
「・・・マリオ君、弟を助けたい?」
「ルイージ・・・?無事なのか・・・?
助けられるんなら・・・、今すぐでも・・・!」
俺は考えずに、即答した
その答えに彼は、わかったと一言言いキノコタウンに向けてその足を進めた
俺も黙ってその後ろをついていく・・・
==========================
「キノコ城に・・・、ルイージがいるのか?」
何も言わないピットに、俺は続けた
もしあの質問で、俺がノーと答えていたら、
多分キノコタウンに来ていなかった 何故かそんな気がしてならない
キノコ城にルイージが捕らわれているなら
今度こそ、俺は逃げることは許されない、何よりも俺が許さない
ルイージを助け出す あのとき、出来なかったことが出来るんなら
「そうとも・・・、一刻も早く・・・」
少し間をおいてからピットは返事を返した
それを聞いて、俺は心の中でほんの少しだが、安心した
もうルイージは俺の手の届かない、はるか遠くの別世界に居るんじゃないかと思っていた
俺の希望がまた一つ増えた ピットに、ルイージ
こうして少しずつ希望を増やしていけば・・・いずれも、この世界を救えるかもしれない
そう思うとほんの少しだが、心の緊張がやわらいだ
「見えてきたね・・・心の準備をして、マリオ君」
俺の家を出た時点ですでに、キノコ城と思えない
いびつなシルエットの建物が見えていたが
すぐそばまで近づけば今はその外観がはっきりとわかる
屋根から下はまだなんとかキノコ城の姿を保っている
だが、その上は奇妙な構造の、機械なのだろうか?
よくわからない物体が城を押しつぶしすように相当の量が固定されている
「急ごう、時間は無いよ」
ス・・・
背中に背負っていた弓のような道具を手にし、ピットが先に進んだ
おそらく、彼の武器なのかもしれない
鮮やかな曲線をえがいた形状、振り下ろせば剣みたいに扱うこともできるのか?
かわって俺には道具なんかない だけど負けるわけにはいかないさ
どんな相手が待っていようと・・・
拳を固くにぎり、マリオは意識を集中させる
「いい?敷地内に入ったら城の入り口まで走りきるんだ」
「ああ、わかった」
門をくぐりぬけたときだ
━━ダッ
ピットとマリオは勢いよく駆け出す
当たり前だが、早朝に見たいくつものアーウィンは今じゃ影も形もなくなっていた
「来るよッ」
「?・・・」
駆けながらピットが言った
何が来るんだ?
ヴウンッ
直後、青白く光る細長い何かが俺の頭上を通り越した!
「なッ・・・?!」
レーザー光線・・・?
一瞬だが確かにそうだった
休む間もなく、同じようなレーザー光線が前方から飛び交ってくる
どうやらレーザーは城の屋根、横一列に設置されている装置から
俺達めがけ、自動的に発射されているらしい
明らかにキノコ王国の文明じゃない・・・クッパか・・・?
俺とピットは門からジグザグに敷地内を走りまわり、
レーザーをなんなくかわしていった
この程度のレーザーならステップを利かすだけで余裕だ・・・だッ!?
ダァンッ!!
「マリオ君?!」
俺としたことが、足を滑らせてこけてしまった
あの土砂降りの後で水を吸った地面だ 少し用心するべきだったか
ヴウンッ
「ハッ!!」
転げた俺をさっそくレーザーがねらい打ちしてきた
すぐさま体を転がして、レーザーをよける
「大丈夫だ!今そっちに行く」
前方でこちらに目を配っているピットの姿があったが、
彼の足をとめるわけにはいかない
すぐに立ち上がって彼の元へと走り出す
その様子を見てピットも再び城へと向かった
〜キノコ城・1階・エントランス〜
意外にも、城の中は特に目立った変化はみられなかった
城内は静寂に包まれている
まあ、それが異常といえばそうだが
「急ごう、3階へ」
俺が辺りを見回している間にピットは迷うことなく、
入って中央の2階への階段をのぼっていった
まるでキノコ城を知っているような様子だった
迷うことなく通路を抜けていき、3階へと目指すピット
何をそんなに急いでいるんだろう
まあ、今が非常事態だからといえばそれまでだけど、
それ以上に、何か時間の余裕が無い事情がありそうだ
そのことについて俺がたずねようと彼の背中まで追いついた時
「オオオオオオオオオオ!!!」
「ん・・・!?」
「来たか・・・」
ピットの立ち止まった背中に俺が顔をぶつける
後ろからのぞいてみれば、なんと通路の先からをキノピオの大群が迫っていた!
「キノピオ・・・?」
脳裏に早朝見た、軍服を着たキノピオ達が浮かぶ
今迫ってきているキノピオ達とうりふたつだ
「マリオ君、伏せていて・・・この場は僕が」
「へ・・・?」
迫り来るキノピオ達に対し、鮮やかな金色の弓をピットが構えた
彼の横顔を見て俺は息をのんだ
真剣そのもの、するどく強いまなざしは間違いなく、 キノピオ達に敵意を持った表情だ
「や・・・やめてくれよピット!
あのキノピオ達は悪い奴じゃない!この街の住人だ!」
すがるようにしてピットを止めようとした
それでも彼は構えをほどかなかった むしろさらに腰を落とし
いよいよその弓を振り回そうとしている
「・・・もう彼らを救うための時間はとっくに過ぎている
だから、覚悟を決めなければならないんだ」
「・・・・・・・・・・」
ピットは最後に翼を一回羽ばたかせ、
キノピオの大群に猛スピードで突っ込んでいく・・・!
ズバババババババババッ!!
「うああああああっ」
「ひいいいいいいい!」
「きゃあああああああ!」
目を反らすこともなく、俺はぼう然とその光景を見届けた
時間にしてわずか数秒のことだが・・・
気づいたときにはキノピオ達は俺の前に皆倒れ込んでいた
「マリオ君!早くこっちに」
向こうでたった今、この街の住人達を
まとめて斬り倒した天使が俺に呼びかけている
信用していいのか・・・?彼を・・・ピットを・・・
だけど彼は、今俺のたった一つの希望・・・彼は・・・
「時間が無い、君の弟を救えるチャンスは
今しかないんだ早くこっちに来てくれ!」
・・・・・・・・・俺の弟
考えるのはやめた
今ここで立ち止まってても仕方ない
もちろん逃げることも・・・俺には前進しか許されない
何回か、まだ意識のあるキノピオが俺に頭を踏みつけられては
うめき声を発したが、それをことごとく無視し、俺はピットの待つ元へ向かった
ピットが扉を開き奥へと進む
3階への階段へとさしかかった
「・・・マリオ君、変だとは思わないかい?」
「何が・・・?」
俺から見れば、もう全てが変だ
この城も、今の状況も・・・ピットも
「君は今朝、この街の住人達が戦争で死んだのを見たって言ったよね」
「ああ・・・そうだけど」
「それでも城にはまだあれほどキノピオ達が残っていた
少し数が多すぎる・・・そんな気はしなかった?」
数・・・?
そう言えば・・・
「たしかにキノコタウンにあんなにキノピオが居たはずは・・・」
「それに、君はこの王国の有名人でもありヒーローだ
本当なら、キノピオ達がそんなマリオ君に無反応なわけがない」
そうだ 早朝見たキノピオ達も俺に一切反応することなく
アーウィンに乗り込んで空へと飛んでいった
あんなことは初めてだ・・・キノピオが俺を無視するなんて
まわりに異常なことが多すぎて、さほど気にもならなかった
よくよく考えてみると不思議だ・・・
「彼らは・・・外見はキノピオでも中身は違うのさ
彼らを救うにはもう手遅れなんだ」
「そ・・・そんな・・・」
いつから・・・そんなことになっていたんだ
俺がずっと家にこもっていた間に・・・とんでもないことに
「そして、もうすぐ君の弟も彼らと同じようになってしまう
・・・すでにそうなりかけているけど・・・まだ手遅れじゃない」
「ル・・・ルイージまで・・・?!ま・・・まさか・・・」
その瞬間、俺の頭の中で何かを悟った 恐ろしい事実をだ
だけどそれが何なのか明確に把握することはできない
怖いからだ・・・それを理解することは
ガチャッ
「!・・・」
その前にいつのまにか3階に到着していた
部屋にある立派な時計の振り子の音にマリオは若干おどろかされた
時計の針は今、9:50をまわったところをさしている
「ピット・・・ルイージは・・・どこに?」
辺りにくまなく視線を配るピットに声をかけたが、
返事は帰ってこなかった・・・ルイージを探しているのだろうか?
「まだ手遅れではないはず・・・」
独り言なのかもしれない
息を吐くように小さな声でそう言ったが、俺には聞こえていた
「屋上に出てみよう、そこにルイージ君がいるかもしれない」
「・・・ああ!」
ようやく、ピットの口から直接ルイージの名が聞けた
今度はらせん階段を上がり、いよいよ屋上へと出る
城の外から眺めていた時は屋上は機械のような壁におおわれてよく見えなかった
今、その内側に入り込もうとしているんだ
俺とピットの足音が異常に大きく響き渡る
あまりにも静かすぎるんだ
世界が・・・・・・・・
まるで取り残されたかのような感覚だ
ガアンッ
ピットが屋上への扉を迷うことなく押し開けた
ビュオオオオオオオオォォォオォォオオ
外は冷たい風が強く吹き荒れている
早朝の土砂降りを思わせるような強さだ
ピ・・・ピ・・・ピ
「ん・・・?」
強い風の音に紛れて、自然には存在しない音が
全く同じ間合いをおいて鳴っているのを耳にする
「ッ・・・・・・・」
ピットが何も言わずに、走りだした
屋上中央の大きい柱の向こう側へ消える
そっちにいけば、キノコタウンが見渡せる
俺も黙って彼の後を追って走った
絶えず鳴り続ける謎の音が徐々に大きさを増す
それは、1秒ごとに・・・刻々と時を刻むようにして・・・
ピットの待つ、柱の表側へとやってきた時・・・
俺はまぶしい太陽に照らされ、目を細めた
ピットは俺に背を向けて、立ちつくしている
彼の向いている前方になにかが見える
細めた目を徐々に開き、俺はその光景を目の当たりにした
ピ・・・ピ・・・ピ
「・・・ルイージ!!!」
ピ・・・ピ・・・ピ
俺は視線の先、見慣れた緑のオーバーオールに向かって叫んだ
間違いない、俺の弟、ルイージがそこには居た
ピットの前へ出て、ルイージに近づく
ルイージは俺ではなく、すぐそばにある大きな装置を見つめていた
ピ・・・ピ・・・ピ
耳をつんざくような音はその装置から鳴っている
それが何なのかは俺にはわからないが・・・
「ルイージ・・・!!」
俺はもう一度呼びかけた
・・・・・・・・・・・・・・・
しかし、それでもまだ反応をしない
『それに、君はこの王国の有名人でもありヒーローだ
本当なら、キノピオ達がそんなマリオ君に無反応なわけがない』
『彼らは・・・外見はキノピオでも中身は違うのさ
彼らを救うにはもう手遅れなんだ』
ピットの言った言葉が俺の意識のなかでよみがえる
嘘だろ・・・、まさか・・・もう手遅れだとでも言うのか・・・?
次第に俺の中で焦りが生じる
やはり・・・もうルイージは・・・俺の知らない所に・・・!?
「ルイージ!返事をしてくれ・・・!!」
「・・・聞こえてんだよ」
そう言ってようやくうつむいたままのルイージが反応してくれた
俺の中でいっきに緊張感がほぐれた・・・のもつかの間
「いまごろ、世界を見捨てたお前がこのオレに何の用があるってんだ」
「!!・・・ル・・・」
・・・それは予想だにしていなかった返事だった
ルイージが・・・俺を・・・
「今になって急にヒーローやり出したって、もう手遅れなんだよ」
「・・・ルイージ君、悪いが今から"君を返して貰うよ"」
ピットは静かにルイージへと歩み寄る
「ま・・まてピット・・・!一体どうなってるんだよ!
ルイージはまだ助かるんじゃなかったのか!?」
あの言動、しゃべり方からその表情の一片まで、ルイージとは全くの別人だ
ただ同じ声と外見だけを模造した、俺が知っているルイージとは別の・・・!
これじゃあ、あのキノピオ達と一緒じゃないか
俺は・・・ルイージを救いたくてここに来ただけで・・・
こんな現実を見にここに来たんじゃないッ
「望むところだ、ピット お前を倒し、俺は晴れてキノコ王国の国王になる」
!?
一体ルイージは何を言ってるんだ?!
それに、ピットのことを知っているのか・・・?
全くついていけない・・・ここまで全てが変わっていたなんて
「例のモンは持ってるんだろう、確か一つだけ流れたことは聞いている
さっさとやろうぜ」
「ああ、しかし戦うのは僕じゃない ・・・・・・マリオ君だ」
「な・・・!?」
まさかの言葉に耳を疑った
俺に、俺に戦えと言ったのか・・・?ルイージと!?
無理だ!!
そうピットに言おうと彼の方へ視線を向けた
ス・・・
すると、俺の目の前に黒い球が差し出された
ピットがどこからか取り出したものだった
「何だよ・・・これ・・・」
拳より若干大きいほどのその球はまるで鉄球のように黒く、
そしてなによりも重かった・・・俺は無意識にその球を受け取っていた
「マリオと・・・?まあちょうどいい
マリオを倒せばこのオレが・・・キングになれる」
キング・・・!!
キャプテンクルール・・・そしてエメル
奴らもたしか同じことを・・・!
いつのまにか、ルイージも俺が持っているものと同様の黒い球を手にしていた
「ルイージ、正気になれよ・・・お前おかしいぞ!?」
「マリオ・・・オレは容赦はしない
オレ自身のために、本気でお前を始末する」
ルイージ・・・!
あいつの目に今、おだやかな優しさは消えている
あるのは闘争心のみ・・・ピットも・・・エメルも・・・
あのキノピオ達と・・・同じ目をしている・・・
「できない・・・」
「・・・?」
「ルイージ・・・あの時・・・、
あの時俺がお前を見捨てて逃げたこと・・・
そしてその後もずっと逃げたままだったことは謝る!!」
「・・・・・・・・・・・・」
「俺は怖かったんだ!しばらくずっと平和な日々が続いて、
いきなりそれが崩壊したあのとき、俺は怖くなったんだ!
だけど、今は違う・・・ルイージ・・・お前を助けに来たんだ
だから許してくれ!!俺はもうお前を見捨てることは絶対にしない!!!」
「マリオ君・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
しばらくの沈黙の間、俺はずっと目をつぶり拳を握って、心の中でルイージに謝り続けていた
もう取り返しの付かないことが起こっているのは仕方無い・・・・
だけど、俺はお前までも失ってしまったら・・・俺は・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ━━━━━━!!!
「!!?」
大きな音が突然鳴り響く
あまりに突然のことで俺は身震いを起こした
「いけない、マリオ君!早くそれを・・・!」
ピットが俺の目の前まで慌てた素振りで駆け寄ってきた
「おいッ、何なんだ・・・?!」
ピットは片手で俺の肩を押さえ、もう一方の手で
俺が持っていた黒い球を無理矢理俺の胸に押し当てた
「うッ・・・おい、ピット・・・?」
若干抵抗を試みたが、肩を押さえるピットの手に力が増した
ピットはさらに俺の胸に強く、球を押し当てる・・・!
「やめろ・・・何をする気なんだ?!」
さすがにふりほどこうとしたその矢先、
ピットの表情を見た俺は息を飲んだ
「ごめん、マリオ君 少し辛いかもしれないけど・・・我慢して・・・ほしいな」
その表情は、申し訳ないという気持ちが全面的に現れていた
悲しみも、哀れみも、怒りも、全て
グヴッ
「ッ━━━!!」
その直後、俺の中にその球は"入ってきた"
黒く、固い球は服の繊維を超え、皮膚を超え、肉を超え・・・
俺の内にゆっくりと、ゆっくりと入ってきた
俺の目の前の視界はグルグルと回りだしたと思ったら、
とたんに体がフワっと浮いたように軽くなるのを感じた
聴覚、視覚、触覚、全てが鈍くなり、俺の意識もまた暗闇に葬られようとしていた
だが、この感覚には覚えがあった むしろ、慣れ親しんでいた、いつもの感覚
夢だ
夢から覚めるその直前のあの不思議な感覚
最もはっきりと鮮明な夢を見たその直後に、現実に帰る過程を遡るかのように
俺は記憶の海へと沈んでいった
そしてそれは、一瞬のまばゆい閃光の後に感じた
=================================================
どうしてそう思うんだ? お前に口を訊いてるんじゃない
命 君はここで待っていてくれ 奴はとんでもない忘れモノをしていったな
に そんなことしたらタダじゃおかないさ
は 所詮、世界を救うのは無理なことだったんだよ 甘 信 忘
変 無 い じ れ
え 理 今度は救えるといいな、ピット君 な ら な
ら 矢 れ い
れ 理 人々のピースを集めきったところでそれがどうなるんだ る で
な 従 か
い わ 総ての世界をタブーが包み込むように ?
よ せ 貴様はそれでも天使というのか?
て 誰しも、肉体を捨て夢の世界に留まりたいと思ってる
=================================================
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・くん・・・・リオ君
「マリオ君!」
「!」
俺は深い記憶の海から意識を取り戻した
「マリオ君!・・・大丈夫かい・・・・・?」
「・・・・・あ、・・・・ああ」
俺は一瞬様々な体験を同時に、それも一瞬の内にした
あらゆる感情が働き、その全てが打ち消し合って俺の中に消えた
今のは一体・・・なんだったんだ・・・
だけど・・・それよりも今の俺は・・・
「なんだこれ・・・凄く体が熱い、体の芯から力が沸き上がってくる」
一言で言えばそれは覚醒だった
朝目覚めた時から、ずっと俺にまとわりついていた重たい空気は
すっかりどこかへと消えていた 今なら何でもできる
「マリオ君、君に埋め込んだ球の力を使ってルイージ君を倒すんだ
いや・・・ルイージ君から同じ球を奪うだけでいい そうすれば彼を取り戻すことができる」
「ああ、わかったよ」
俺はルイージをにらむ
「いくぞッ」
ルイージの戦法は把握している
大乱闘の試合でも俺の方が勝率が高い
いざ駆け出した
だが、遠くにたたずんでいたはずのルイージが
目にもとまらない速さでこちらに向かってきた
それも、回転しながらだ
不意の攻撃にすきを取られ、ルイージの拳を二発受けたが、
間合いを取るために俺は後退する
「はァ━━━ッ!!」
引き下がったところで再びルイージサイクロンに巻き込まれる
同じくしてルイージの攻撃が降りかかってくるが、
今度はシールドを張って攻撃をしのいだ
「お返しだッ!!」
ファイア掌底をかまそうと腕を伸ばす
炎の爆発を起こしたが、そこにルイージの姿は無い
「?!」
空中へ高く飛び上がったルイージは、落下を利用した手刀を俺にたたき込んできた
彼をつかもうとすればまたもやルイージサイクロンに巻き込まれる
「ッ・・・!」
「どうしたんだマリオ、手も足も出ないか?」
マリオがこうまでルイージに続けて攻撃を受けてしまうには理由があった
それは、ルイージの戦法がいつもと違うことにあったのだ
動きのキレも増し、隙が大幅に減少している
「そんなワケないだろ・・・これはただのハンデだ」
と言い返してはみるものの、ルイージの動きに早く対応しないと・・・
マリオはひとまず彼の攻撃が届かないほどの距離を保ちながら、
ファイアボールを空中からいくつも放ちはじめる
ジャンプしながらであればルイージサイクロンも避けられる
ここはルイージだと思って甘くみずに、慎重に攻めるべきだな
ルイージはファイアボールを軽々避けるが、
攻撃には踏み出せず、往生している
「そこだッ!!」
ドグッ!
着地の瞬間を狙い、マリオはミドルキックをルイージの腹にねじ込んだ
すかさず胸ぐらをつかみ、勢いよく振り回す!
「ハッ!!」
吹っ飛んだルイージは受け身をとって着地した
そのすぐ目前にファイアボールが迫る
合間を取り、マリオが連発しているのだ
「あっという間に戦況逆転だな」
「・・・・・・」
ルイージはそのまましばらく黙した
「・・・?」
ファイアボールは避けるのだが、あくまでその場回避であり、
そこから近づくことも遠ざかることもしない
「はぁああぁあ!!」
手を上空へ伸ばす 俺は警戒した
あんな動作も、普段のルイージの戦法には無い・・・あの構えは・・・
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ・・・
伸ばした手の上に、光が集まった
その光の中から何か小さな物体が現れる
「ん・・・な、なんだアレ」
カプセルの形をしたその白い物体はすぐさまパリンと音をたてて割れた
すると、カプセルの中から何かの人形が現れたかと思えば、
みるみるそれが大きくなり、ハンマーブロスへと姿を変えていった
「!?・・・ハンマーブロス・・・?」
「さあハンマーブロス、マリオへ向けて
じゃんじゃんハンマーを投げ飛ばしてくれ」
「へいよ!」
何故かルイージの命令通りに、ハンマーブロスは
いくつものハンマーを投げつけてきた
後ろへ下がれば当たることはないけど、
これじゃ当分ルイージには近寄れないな
いや・・・そもそも何でハンマーブロスがルイージを・・・
考えている間に、ルイージが再び腕を伸ばし、同じカプセルを取り出した
割れた中から現れたのはジュゲム
上空から次々とパイポを投げ落とす
ハンマーブロスとジュゲムによる飛び道具攻撃は
すっかりマリオの安全な場所を無くならせていた
「っく、1対1の戦いに変な邪魔を入れるなんて・・・
ピット、悪いけど俺に味方してく・・・ん・・・?」
後方を振り返り、ピットへ助けを求めたが、
肝心の彼の姿をどこにもなかった
中央の柱を回り込んでみても、影すら残っていない
「どこに行っちゃったんだ・・・ピットは・・・」
しかし絶え間なくジュゲムたちの攻撃は続く
この戦況下でマリオはルイージに挑むしかなかった
「しょうがない・・・やってやる・・・!」
マリオは帽子を整え、ハンマーとパイポが降り注ぐも、
ルイージの元へ駆けだした・・・!
〜上空・戦艦ハルバード船内・メイン操縦席〜
「メタナイト様、攻撃ポイント到着までもう間もなくです」
「最終テスト終了、全条件クリア、異常は何もありません
主砲発射準備は完了しています 合図を頂ければすぐにも」
「・・・ああ」
ハルバードは現在、キノコ城へ接近している
これは、2度目の襲来だった
「レーダー、反応無し
早朝はこのポイントにて敵機の襲来を確認しましたが、
現在は全く確認されていません」
「やはりな 空兵は全て使い果たしたか 残るは陸兵か?」
「地上も全てのレーダーに反応はありません」
「・・・とすると、城か
だが、我々の狙うべくは兵でも将軍でも、国王でもない 主砲発射用意!」
「了解」
「・・・亜空爆弾だ」
メタナイトの部下、ワドルディが操縦席のレバーを押し込む
「主砲発射5秒前!」
ピピピ!
「メタナイト様!レーダーに反応が!
目標から一機の飛行物体を確認!!」
「構わん そいつごと撃ち消せ」
「映像解析結果が出ました・・・、ピ・・・ピットです!!」
「主砲発射!!」
「とッ・・・発射を中止しろ!!」
船内にメタナイトの怒号が飛んだ
あわててワドルディがレバーを引き戻す
戦艦ハルバードは空中に留まった
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
主砲はギリギリ発射されることは無かった
発射エネルギーがハルバードの砲台に蓄積されたまま
「ふ〜・・・」
船内にいる部下達の多くがため息をついた
もし主砲が発射されていれば彼を木っ端みじんに消し飛ばしていただろう
「・・・また貴様か・・・」
メインモニターの映像解析結果に表示されたピットを見つめ、
メタナイトを独り、そっとそう口にした
「マイクを入れろ それと、オートスピーカーもだ」
「了解」
〜戦艦ハルバード・船外・操縦室前〜
ピット羽ばたきながら、ハルバードへと接近していた
足場に着地し、巨大な主砲が構えるその目前にまで移動する
その奥には操縦室が見える
『そこで何をしている』
渋い男の声がスピーカーから発せられる
この声の主をピットは知っていた
『その城の亜空爆弾が爆発するのに残り時間がいくらあるか、
知っていてそこに居るのか?』
「・・・今はあなた達と戦いに来たのではないんです・・・ただ」
『・・・ノイズの低減、周波数を落とせ 了解』
「あそこにはルイージのピースがあります」
『・・・それがどうかしたのか』
「マリオ君が彼のピースを取り返そうとしています
ご存じの通り、今の僕には何もできなくて、もう彼しかいないんです」
『・・・マリオ・・・が、・・・か』
「僕は今後マリオ君のサポートをしていくつもりです
もちろん、協力してくれとは言いません
でも、この場は僕に預けて欲しいんです 僕自身の償いのためにも」
『・・・・わかった
オートスピーカーを切れ
旋回し、キノコ王国を後にする』
ピットは戦艦ハルバードからキノコ城向けて飛びたった
別れるようにしてハルバードはキノコ城から離れていく
亜空爆弾爆発まで残り時間
3分
次回 『スマッシュボール 【後編】』近日更新予定
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